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旧大學湯 国登録有形文化財(建造物)登録の答申について

CATEGORY : 所長ブログ   DATE : 2024年11月26日

かねてから国文化財登録に向けて、図面・所見作成のお手伝いをしていました福岡市東区箱崎にある「旧大學湯」が、去る11月22日、国登録文化財に登録妥当として答申されました。これまで旧銭湯を地域のコミュニティスペースとして活用されてきた石田健さん・銀ソーダさんの日々の活動、福岡市文化財活用課の赤坂係長・黒田有花さんのご尽力によって、歴史的たたずまいを残す旧銭湯が、国登録有形文化財というお墨付きをもらって、さらに箱崎地区の魅力の一つが増えるという嬉しいニュースとなりました。

 私と旧大學湯の出会いは、昨年受講していた福岡県建築士会主催の「ヘリテージマネージャー養成講座」の演習課題として、これを扱うことから始まりました。養成講座は受講者がそれぞれ自由に課題を選んで、その図化等を通して歴史的建造物への見識を深め、それを文化財登録として後世に遺す手法を学ぶというプログラム。ここでは中島孝行先生をはじめとした多くの先生方から貴重な学びを得ることとなります。その課題選定にあたって、市文化財活用課の赤坂係長・黒田さんに相談を持ちかけたところ、大學湯さんとのご縁をいただくこととなりました。

実際の図面作成が始まってからは、週末を使って銀ソーダさんに立会の手間をおかけしながら大學湯に出向き、現地測量と図面化を進めました。建物の概要を示す所見作成では東京在住の石田健さん来福の折に丁寧に保存された過去の写真や図面、契約書類等の資料を借用。それらを読み解きながら、大學湯の生誕から現在までの年表を作成し、この建物と関わる人々が辿ってきた歴史を整理しました。所見の大半は市文化財活用課の黒田さんのご尽力による部分が多く、これを九州大学の箕浦先生にもアドバイスいただきながら、まとめていくこととなりました。

終盤の文化庁への答申作業は主に市文化材活用課と石田さん、銀ソーダさんによって行われ、私はあまり関われずにいましたが、その都度、丁寧なご連絡と現況報告をいただき、答申の日を心待ちにしておりました。

これまで、新築の設計作業が多かった中で、歴史的建物を後世に遺していく一通りの流れを体験できたこと、その中で多様な異なる立場の素晴らしい人々との出会いがあったことは得がたい体験でした。一つの建物の歴史を辿ることは、そこで生活した家族やその町の歴史を辿ることであり、同時に空襲や廃業などの建物存続の危機に、どう生き永らえる選択がされたなどをなぞる作業で、資料を照らしながら往時に思いを巡らすのは楽しい時間でした。

杉本泰志

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