シュタイナー教育の認可保育園
住宅地に建つ木造2階建ての保育園。かつて同敷地の住宅で10人前後の無認可保育を行っていたが、市の待機児童解消の政策に合わせ認可取得と同時に建替え、60人の保育空間をつくることとなった。シュタイナー教育の認可保育園としては全国初。
大木に囲まれた「森のおうち」
敷地は住宅街の中にあり、前面道路から敷地奥に向かって約2m下がっていく緩やかな傾斜地。クスノキ・モチノキの大木が緑の天蓋を形成しており、この中に家庭的なぬくもりのある保育の場をつくることを目指した。前面道路からの家並みを周囲に揃えるという観点では道路側の階高を抑え、半切妻屋根の妻面が森の緑の中から顔を出すことで「森のおうち」を体現する。
敷地の勾配と大木を拠り所とした平面計画
約5度傾斜する敷地にあわせ、床高さを450mmずつ下げたスキップフロアとした。地形を大きく変えず、室内外のつながりを高め、どこからでも外に出やすい部屋構成となっている。大木への軸線をよりどころに諸室配置・開口を計画。普段の視野の中に木が入り、季節感を感じられるように配慮した。
在来木造準耐火建築
法的には準耐火建築となるが、天然の素材に囲まれた空間とするため木造を採用。燃えしろ設計により構造材を表しとした。可能な限り杉製材を用い、在来木造として施工者が限定されない様にした。
三方を擁壁に囲まれる湿気の高い敷地のため、壁内・小屋裏の自然通気に加え、床下を機械換気、空気が動く構成とした。
境界の曖昧なファンタジーの空間
シュタイナー教育では幼い子どもは自分と他者との境界が曖昧で、ファンタジーの中に生きると考えられている。育ちの器となる空間は、1本の直線であちらとこちらを明確に分断するのではなく、中間的で曖昧な空間が曲線や多角形でつながる、有機的な場となることを目指した。地形の様な床、葉脈の様な開口、母胎の様な室からなる建築は、直線的な大人の世界とは異なり、子どもたちの想像力をかきたて、多様な遊びを誘発している。
つくるプロセスの共有
照明のシェードは保育士・関係者の家族が協力して手作りで製作。
共同作業を通して新しく生まれる保育園での初対面の人間関係の素地作りとなった。
所在地:福岡県福岡市中央区小笹3丁目16番6号
発注者:社会福祉法人レムニスカート 理事長 角たか子
主要用途:保育園
構造・規模:木造・2F建
延床面積:487.72m²
施工:
竣工:2015年3月
業務: |
基本設計,実施設計,監理 |
担当者: |
杉本 泰志, 安武 昌子 |
備考: |
新建築2016年5月号掲載 |